税金ひとことアドバイス: 申告しないと適用されない軽減措置って何?
相続税法は、知らないと恐ろしい法律です。
実際の相続税法を勉強する機会などは、一般の人はほとんどなく、また勉強したところでそれを活かす機会がないから、これらを勉強するのは税理士か、税務職員くらいしかないのかもしれません。
【知らないと恐ろしい相続税法の規定】
相続税法には、相続税の申告をして、初めて適用できるものがあります。
相続税法第19条の2に「配偶者に対する相続税額の軽減」というものと、租税特別措置法第69条の4に「小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例」というもの、がそれにあたります。
これらは、相続税の申告をして初めて適用できるもので、しかも遺産分割が完了していないと適用できません。
それなら、相続税の申告期限は相続開始の日から10ヶ月だから、10ヶ月以内に分割協議が整わないと適用はできないのかといえばそうではありません。
相続人の間で、遺産分割で揉めている場合など、何らかの事情で10ヶ月以内の遺産分割が整わない場合には、相続税の申告書は、相続財産が未分割の状態で各自法定相続分により申告することになります。
申告の際に「3年以内の分割見込書」という申告書を提出すれば、3年間のうちに遺産分割が完了した時に改めて配偶者の税額軽減や小規模宅地の特例を受けることはできます。
【無申告に対する決定処分では適用されない軽減措置】
税務署は、納税者が申告書を提出しない場合には、正直に申告している人が馬鹿を見ることのないように調査額に基づいて一方的に決定という処分を行います。
もちろん、税務署も決定処分はいきなり行うことはありません。幾度となく申告書の提出を促して、それでも提出されない場合には仕方なく決定処分を行うわけである。
この決定処分というもの、相続人が相続人の間で遺産分割を行い、相続税の申告さえすれば難なく適用が受けられるものが、この決定処分を受けたら申告したことにはなりませんから、配偶者の税額軽減や小規模宅地の特例の適用は受けられないことになる。
両方とも相当に相続税額に影響するものなので、注意したいところである。