平成23年度 税制改正のゆくえは?

所長が内外等で発表した、評論・論文等を掲載します。

 

平成23年度 税制改正のゆくえは?

私は今、日本租税法務学会の研究総会委員長をしています。今年の研究総会は、平成23年10月15日(土)専修大学で開催されました。

 

平成22年度は、「租税行政と納税者の権利保護」という統一テーマで、石村耕治先生に、「先進諸国の納税者の権利憲章」という、基調講演をしていただきました。

 

各論として、納税者の権利という立場から、憲法、租税確定手続、税務調査手続、納税者の権利救済手続等について発表があり、活発な議論が展開されました。

 

平成23年度は、その関連でもう一歩つっこんだ「納税環境の整備と納税者の権利保護」というテーマで取り組むことになりました。

 

平成22年12月16日に「平成23年度税制改正大綱」が公表されました。民主党政権になって、昨年より税制改正の方式が様変わりしており、今後、この大綱に沿って通常国会に所要の改正法案が提出されていく予定でした。しかし、今年はさらに内閣が変わり、税制改正法案が二転三転しております。従って今国会で納税環境整備が整う段取りになっておらず、まだ立法議論の渦中にあるということになるのでしょうか。

 

当学会は、税理士という実務家の立場から、今年度の統一テーマに果敢に挑戦することといたしました。とりわけ、国税通則法について、昭和37年の制定以来、最大の見直しを図るという大綱でしたが、いまだに改正案がかたまっていないのが現状であります。

 

そうした中で、今年の基調講演は、時の人、政府税制調査会専門家委員会委員であり、納税環境整備小委員会座長である、三木義一先生に「納税環境の整備と国税通則法改正(仮題)」として講演をしていただきました。

 

その後のパネルディスカッションには、学者の立場から納税環境の整備の意義と射程として現状と問題点。納税者権利憲章と適正手続という観点から、今後の国税通則法改正の見通しの発表がありました。

 

また、税理士という実務家の立場から、税務調査手続きにおける納税者の権利(予測可能性の視点から)について。さらに、国税通則法改正案における、納税者事後救済として、更正の請求、不服審査手続きについてどういうことになるのかを税理士の立場から立論し、発表していただきました。

 

今年の税制改正は、税理士制度のあり方をめぐり、今後どうなっていくかを見すえる上で、極めて重要な税制改正でありますが、実際には大綱のトーンよりは低調なものになっていく様子がうかがえて、私個人としてはたいへん残念に思っているところであります。しかし今後も強い関心をよせる必要がありそうです。